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2007年1月11日 (木)

『週刊東洋経済』1月13日号「雇用破壊」特集

 『東洋経済』1月13日号特集「雇用破壊」は、非正規雇用問題で気を吐く同誌の、さらに一歩踏み込む追求の記事が多かった。一言で言えば、経済誌としてのリアリズムを感じた。

 「ホワイトカラー・エグゼンプション」は政財界、労組を中心に、熱い焦点になりつつある。その労働契約法制のなかで、派遣労働者の雇用期間制限を外す問題も、大きなテーマだ。

 「偽装請負」が、大企業にとって”金の卵を生むアヒル”であることは、明らかだ。それは、同誌の「正社員にはさせない!?」にある、「請負と派遣をたらい回し/中途採用の門戸も閉ざす」(46ページ)にも、すごく率直に書かれている。そこに登場するのが、キヤノン宇都宮光学機器事業所で、「非球面レンズ」の研磨工程に携わる「請負労働者」だ。

 「入社後、請負会社はさらに賃金水準を切り下げたため、年収300万円がやっと。その上、所属する請負会社とは3ヶ月ごとに契約を更新。つねに生産変動などに伴う雇用不安にさらされている。
 …不安に拍車をかけたのが、05年5月に突如行われた請負から派遣への契約切り替えだった。何も知らされぬまま、派遣契約書にサインさせられ、『これから1年以内に請負ができるようにならないとみんな終了(雇い止め)になる』と請負会社に宣告された。
 当時、製造現場への派遣は1年の期間制限があった(07年より3年)。その間に社員から指導を受け、完全な請負へと転換できればよし、無理なら契約終了。キヤノンも請負会社も、派遣期間終了後に直接雇用を申し入れる義務の存在などつゆともにおわせなかった。1年後、雇用契約はふたたび、『請負』にもどった」

 「偽装請負」(実質的に派遣社員並みに働いているのに、請負で契約していること)が昨年、社会的批判にあい、キヤノンも請負労働者の一部正社員雇用が報道された。しかし、現実に起こったのは、請負→派遣→請負へ。この「完全なモノ扱いに、請負労働者たちは猛反発」、昨年、12月9日、同事業所の請負労働者25人が、労働組合「キヤノン・宇都宮支部」を結成し、直接雇用をもとめ、活動をスタートした。

 この記事の告発した事実の中に、現在の労働契約法制の問題の核心が、くっきりと出ている。要は今回のさらなる、抜本的な法改定で、派遣の雇用期間制限を外し、直接雇用の義務を会社は免れ、契約期間更新を繰り返すことで、「偽装」請負の問題もクリアーしようとしている。

 同、特集には、厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会の3議員の発言がまとめられている。「改革は何をもたらすのか」(44ページ)。中でも奥谷禮子氏(ザ・アール代表取締役)の発言は、非常に率直だ。

 「さらなる長時間労働、過労死を招くという反発がありますが、だいたい経営者は、過労死するまで働けなんて言いませんからね。過労死を含めて、これは自己管理だと私は思います。ボクシングの選手と一緒。…自分でつらいなら、休みたいと自己主張すればいいのに、そんなことは言えない、とヘンな自己規制をしてしまって、周囲に促されないと休みも取れない。揚げ句、会社が悪い、上司が悪いと他人のせい」(44ページ)

 この方は、現在、過労死の労災認定をめぐっての裁判をどう考えているのだろうか。あるいは、今後、そういう裁判が多発することを恐れるあまり、労働時間規制を外すための急先鋒として、意識的に挑発的な発言をしているのだろうか。
 もちろん、この人の人格的な評価はともかく、一経営者としては、こういう資本の塊のような方もいるのは事実だろう。しかし、国の政策審議委員にふさわしい発言とはとても言えないのではないだろうか。

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