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2007年7月 9日 (月)

広井良典氏「社会保障による再分配強化」

 9日付、朝日新聞 4面、「この人、この話題」は、「現代の格差」、千葉大教授の広井良典氏(公共政策)でした。
 結構、長い記事でしたが、テーマは「社会保障による再分配強めよ」です。

 まず、戦後日本の『富の再分配政策』は4つの段階をたどったといいます。
 1)終戦直後の時期、「強力な機会の平等」
 2)1950~60年代前半、「生産部門を通じた再分配」、
 3)この再分配が翳りを見せた、1970年代~90年代 「公共事業型社会保障」および、高齢者関係の社会保障整備
 そして現在に続く
 4)2001年以降で、「生産部門を通じた再分配」が壊されながら、それを代替するはずの社会保障制度もまた縮減された
 
 この状況は、この文章の後段で指摘されていますが、資本主義の国々で世界的にみたときに、次のような一定の共通した経済的背景があります。

 「大きく見れば、物質的な富が飽和する中で現代の先進国は慢性的な供給(生産)過剰の状況にある。これは『雇用の総量が拡大を続ける』という前提が成立しないということ」である。

 私が大事だと思うのは、氏が同じ資本主義国、先進国でも、社会政策的対応で大きく2つの流れがあるのを、区別していることです。ここで広井氏が、図を提示します。「労働年齢人口における相対的貧困と社会保障支出《保健医療を除く、GDP比》」のOECD各国比較で、その特徴は、

 「各国の社会保障支出と相対的貧困率との間にはかなり明瞭な相関関係がみられる。これは、経済発展の一定段階を過ぎた社会においては、『社会保障による再分配』の重要性が高まることを示している」
 
 図からは、社会保障支出が低くて、貧困度が高い、メキシコ、日本、アメリカ
 逆に、社会保障支出が高くて、貧困率が低い、デンマーク、スウェーデン、フランス、
という傾向が現れます。これは、社会政策面でも2つのグループに分けられ、

 一つは、「主にヨーロッパの場合(最低賃金が高く雇用保護が強いため)高い失業率が慢性化」する。
 もう一つは、「アメリカや日本の場合は失業率は相対的に低いものの低賃金ないしワーキングプアなどの状況が顕著になっている」

 なぜ世界で1,2位の経済大国で、貧困・格差が広がるのか、その問題の性格のつかみ方ではそのとおりだと思います。そして、これに対する国民経済の対応の仕方も、二通り。

 「こうした構造への根本対応は、海外に需要を求めていくか、
 できる限り内部で循環するような経済を作っていくか」

 そして筆者は、「地球の有限性や『生産の豊かさ』を考慮」してこの後者の「定常型」モデルを支持する。そのためには、「労働時間の短縮などとセットに社会保障による再分配をダイナミックに行っていくことが不可欠となる」と主張します。めざすべき方向としては、私は、その通りだと思うのです。

 問題は、ではどうやって、社会保障による再分配を強めていくかです。広井氏も指摘されるとおり、まさにそこで「財源論」の中身が問われるわけです。
 氏は、「財源として有力なのは消費税のほか相続税、環境税、土地課税である」といいます。これは再分配機能の強化という議論の筋からして、「財源論」としては問題はありはしないか。小泉改革以降、日本の再分配機能を奪ったのは、低所得者への課税強化、所得控除の大胆な削減であり、この点で「財源論」として逆配分を強めたのでした。

 つまり低所得者に負担の大きい消費税よりも、法人課税、資産課税の強化が第一に挙げられてしかるべきではないか、ということになりはしないか。

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