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2008年5月18日 (日)

国民が「命」を吹き込む大切さ 憲法と政治

JCJのメールニュースで、知ったこの社説。

「西日本新聞」 5月2日付社説「国民が「命」を吹き込む大切さ 憲法と政治

 「憲法42条に定めた2院制は、マッカーサー草案では1院制になっていたものを日本側の要求で実現させた条項」だということ。

 「3分の2」再議決の仕組みがあるのは、民意に従わない政治の暴走に歯止めのためとの指摘は、「ねじれ国会」の見方として、重要。

国民が「命」を吹き込む大切さ 憲法と政治

2008年5月2日 「西日本新聞」社説

 昨年秋ごろから急に注目されるようになった憲法の条項があります。いわゆる「3分の2」条項です。

 「衆議院で可決した法案を参議院が異なった議決をした場合、あるいは60日以内に議決しないときには、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決したときは法律となる」

 憲法は59条の第2項と第4項で、そのように規定しています。

 半世紀以上も使われなかった条項です。が、今年に入って、この規定を使って2つの法律が成立しました。眠っていた憲法条項がよみがえった。そう言えます。

 ひとつはインド洋で米艦船などへの自衛隊の給油を可能にする法案。もうひとつは一昨日成立したガソリンなどの暫定税率を維持する法案です。

 法律の中身については国民の賛否が2分されていますが、成立までの過程は「憲法と政治」や「憲法と国会」のありようを決めるのは国民だということを、あらためて教えているような気がします。

 憲法が骨格を示した「この国のかたち」に血を注ぎ肉を付けて、どう生かしていくか。それは私たち国民の主体的な判断と選択にかかっている。半世紀ぶりの再可決にみられる昨今の政治状況がそれを示しています。

■抑制機能としての二院制

 自衛隊の給油活動再開とガソリンの暫定税率復活に「3分の2」条項が使われたのは、衆参両院で多数派が異なる「ねじれ国会」が出現したからにほかなりません。

 政権にとっては国際貢献や歳入確保いう大義があるのでしょうが、それが民意を的確に反映したものだったかどうか、議論が分かれるところです。

 日本の国際貢献や道路整備のあり方を具体的に議論しないままの「数の力」での再可決に、疑問や反発を感じた国民も多いはずです。

 しかし、政権与党に衆院議席の3分の2以上を与えたのは国民自身です。野党に参院多数を与え「ねじれ国会」状況をつくり出したのも、また国民の選択によるものです。

 両院で与党が多数を握っていた小泉純一郎政権や安倍晋三政権の時代は、野党が反対でも政権が目指した理念や政策を具現する法律が次々に成立しました。強行採決もたびたびでした。

 それが、参院で少数与党となった福田康夫政権では様変わりしました。

 憲法で衆院議決が優先される予算と条約を除く法案は、参院で野党が否決した場合には「3分の2」条項を使わなければ成立しません。

 福田政権が野党との政策協議を提唱し、世論の動向をにらみながら硬軟取り混ぜた国会運営を強いられているのも、このためです。

 小泉、安倍政権の時代と現在とどちらがより民意を反映した政治になるのか。立場によって評価は分かれるでしょうが、国会を民主主義に基づく国民合意形成の場という視点でとらえるなら、答えはおのずと明らかです。

 昨年夏の参院選で国民が選択した「ねじれ国会」はその意味で、政治に抑制と補完を求めた憲法の「2院制」条項に命を吹き込みました。

■「ねじれ」を生かしてこそ

 じつは憲法42条に定めた2院制は、マッカーサー草案では1院制になっていたものを日本側の要求で実現させた条項です。

 当時の憲法制定国会の議事録には2院制採用について「不当な多数圧制に対する抑制と行き過ぎたる一時的な偏奇に対する制止的任務を課す」との政府説明が残されています。

 一部の政党の偏った判断で政治が暴走しないための、当時の日本人の知恵だと考えます。

 政権党が長く両院の多数を制してきたため、近年は2院制の意義と機能も喪失しかけていましたが、「ねじれ国会」の下でいま、あらためて2院制の意味が見直されています。

 「ねじれ国会」には、政策決定に必要な法案成立や法改正が遅れ、円滑で効率的な国政運営ができないといった否定的な見方もあります。

 昨年秋に表面化した自民党と民主党の大連立構想の根拠にもなりました。しかし政治を効率だけで語れば、民意は二の次に置かれかねません。

 憲法が定めた「3分の2」条項は、法律の不成立が国民に重大な損失をもたらす場合に行使できると解するべきでしょう。多用すれば、対立する意見の封じ込めと同じです。

 行使する側の政権与党には、民意がどこにあるのか絶えず検証する必要があります。野党には、それを使わせないで合意を形成する議論と民意を見極める力量が求められます。

 与野党が対立してばかりいたのでは「ねじれ国会」で生き返った2院制の機能が生かされません。

 さまざまな民意を国政に反映させる場である国会は民主主義政治の基本であり、その機能は「国のかたち」の根幹をなすものと言えます。

 憲法が国会を「国権の最高機関」とする所以(ゆえん)です。そのことを憲法記念日を前に、あらためて思います。

=2008/05/02付 西日本新聞朝刊=

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